行政書士業務の中で、申請取次というものがあります。外国籍の方は、日本に在留する資格として、各種の就労資格や特定活動、留学、家族滞在などがありますが、いずれも本人が各地方出入国在留管理庁に行って申請しなくてはなりません。これを本人に代わって、申請するものです。
今回、雇用されている外国籍の方の在留資格関係の依頼をいただいた中で、とてもユニークな事業展開をされる金属加工事業者の政広精密さんとの出会いがありましたので、ご紹介します。
(政広精密の皆さん)
【政広精密のプロフィール】
2008年 勤務していた金属加工会社を辞め、先代の代表者から金属加工事業を引継ぐ
2018年 給食センターの調理器具カバーなどをアルミ鋳物加工の技術で、製造・受注
2020年 ベトナム国籍のティーさんをアルバイトに採用
2021年 新規事業としてベトナム雑貨の輸入販売を開始(ネット通販)
2023年 ベトナム雑貨店併用の金属加工の新社屋完成
〇量産化と少量多種の真ん中くらい
個人経営の政広精密の事業は、大手企業のような量産化でコスト削減し、安価で売りまくる方式とは無縁ですが、少量多種の何でもござれ、でもないその真ん中くらい、といいます。
具体的には政広精密しか取り扱わないアルミ鋳物加工技術で、多くはないけれど、確実に需要のある製品を作っています。それは給食センターの調理器具カバーでした。
製造事業者が廃業し、更新したくても、同じ仕様のものが入手できないと、依頼先から見せられた図面は、60年前のもの。そこから、実需者の要望を聞きながら、試行錯誤を繰り返して、完成したのが「政広精密の調理器具カバー」です。
〇コロナ禍での事業展開
金属加工事業が忙しく人出不足のため、社員募集しますが、なかなか決まりません。そこで、当時、日本で貿易や会計を学ぶ留学生だったベトナム国籍のティーさんをアルバイトに採用しました。
さらに、現在の工場を見直し、新たな機械導入を見据え、新工場建設を計画するに至ります。
が、その後、順調だった政広精密もコロナ禍で受注が減り、資金繰りを考えて、経済産業省の事業再構築補助金の活用を検討することにしました。
(事業再構築補助金とは)
〇雇用を創る
新たに始めようとした事業は、ベトナム雑貨の輸入販売です。ティーさんのベトナムでのコネクションを利用して、外国人比率の高い群馬県伊勢崎市の工場に、ベトナムからの輸入雑貨店舗を併用することを考えました。
これは、ひとつには、留学を終えても就職が決まらないティーさんの雇用確保も兼ねた対策でした。日本の入管制度「技術・人文知識・国際業務」という在留資格は、貿易や会計を学んだ留学者は、そのスキルを活用できる職業にしか就職できません。政広精密が金属加工事業のみでなく、ベトナム輸入雑貨店舗経営を業務内容に加えたことで、ティーさんの就労も可能にしました。
〇最後に
政広精密の従業員さんは、広川代表のことを「面倒見がよくて、ほんとうに優しい」と口をそろえて言います。従業員さんはもちろんですが、業務の依頼で関わった方も含めて、縁を大切につなげていく、その姿勢が結果として、事業を拡大していくエネルギーに変換されているようでした。
=プロフィール=
プラン行政書士事務所 代表行政書士 中西浩子
日本で暮らしたい、農業をはじめたい
さまざまな思いを全力でサポートします。