外食もなかなかままならない毎日で、おうち時間が増えていますが、テイクアウト利用やお取り寄せ食品でプチ贅沢・・なんて機会は、確かに多くなっていますよね。そんな誰にとっても身近な飲食による健康被害の発生を防止するための法律「食品衛生法」が15年ぶりに改正されました。
今回から、3回に分けて食品衛生法の改正について、紹介します。第1回は目次の【1】~【3】を説明します。
(目次)
【1】 食品衛生法の改正のポイント
【2】 HACCP(ハサップ)とは
【3】 対象事業者とその対応
【4】 小規模な営業者等とは
【5】 小規模な営業者等の取組む衛生管理計画(HACCP)とは
【6】 「営業許可制度」の見直しと「営業届出制度」の創設
【7】 HACCPに沿った衛生管理の実施を必要としない営業者(任意での取組)
【8】 群馬県における食品営業許可
【9】 営業の許可に関する経過措置
【10】 届出の留意事項
◎食品衛生法の改正の背景
・共働き、65歳以上の夫婦のみの世帯の増加による食のニーズの変化、中食、外食の利用の増加
・東京オリンピック、パラリンピックの開催に伴う国際的な衛生管理HACCP(ハサップ)への対応
などが挙げられます。
え?日本の食品って安全だと思っていたけど、「国際的な衛生管理」に遅れていたのかしら・・と、思われる方も多いと思います。
「国際的な衛生管理」HACCP(ハサップ)は、そもそもアメリカのNASAで宇宙食の安全対策として開発し、取り入れられてきたものです。欧米等先進国をはじめとした諸外国では、食品衛生管理の国際標準であるHACCP に基づく衛生管理の制度化がすでに進んでいました。
そこで、東京オリンピック・パラリンピックの前に、日本の食品衛生管理の水準を引き上げ、日本の食品を国外へもアピールしようという側面もありました。
【1】 食品衛生法の改正のポイント
令和3年6月1日から、原則として全ての食品等事業者にHACCP(ハサップ)に沿った衛生管理に取り組むことになりました。ただし、規模や業種等で一定の営業者は、取り扱う食品の特性等に応じた衛生管理を行うこととなっています。
また、「営業許可制度」の見直しで、4種から32種に変更され、新たに「営業届出制度」が創設されました。
【2】 HACCP(ハサップ)とは
これまでの衛生管理と全く異なるというものではなく、事業者が自ら考えて安全性確保の取組を推進するものです。具体的には、原材料の入荷から、製造、出荷までのいくつもの工程において、衛生管理をチェックして、安全性の高い食品を届けるための管理手法です。
考え方としては、今までの抜取検査のような結果管理から、工程管理(プロセスチェック方式)へ変えていくことになります。
HACCPは頭文字を取ったもの
危害要因分析Hazard Analysis(ハザードアナリシス)
重要管理点Critical Control Point (クリティカルコントロールポイント)
日々の衛生管理を記録として残し、振り返りを行うことも必要です。
例えば、もし食中毒等が出た場合には、事業者が食中毒菌汚染等の要因を把握し、原因を特定しやすいので、今後の改善への対応も容易に行うことができます。
【3】 対象事業者とその対応
食品等事業者は、規模や業種、取り扱う食品の特性等で、次のように分類されます。
(図2:厚生労働省ウェブサイト/HACCP から抜粋) HACCPに沿った衛生管理の制度化の全体像
※ 全ての食品等事業者
• 学校や病院等の営業ではない集団給食施設もHACCPに沿った衛生管理を実施しなければなりません。
• 公衆衛生に与える影響が少ない営業については、食品等事業者として一般的な衛生管理を実施しなければなりませんが、衛生管理計画の作成及び衛生管理の実施状況の記録とその保存を行う必要はありません。
• 農業及び水産業における食品の採取業はHACCPに沿った衛生管理の制度化の対象外です。
では、次回は具体的な「小規模な営業者等が取組む衛生管理計画(HACCP)とは」などを紹介します。
出典
=プロフィール=
プラン行政書士事務所 代表行政書士 中西浩子
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