「カバチタレ!」田島隆先生の講演会 その2

2025/02/12
漫画「カバチタレ!」の原作者である田島隆先生の講演会その2では、先生の自己プロデュース能力の高さを取り上げたいと思います。
今回の行政書士勉強会の参加者には、開業間もない行政書士も多いため、「食えない行政書士」とならないための、貴重なアドバイスも伺いました。

1  田島隆先生のこと
2 「法律の力」を知る
3 「誰もやっていないこと」を探せ
4 「垂直、水平」思考

3 「誰もやっていないこと」を探せ
田島隆先生は、家庭の経済事情で高校を中退後、独学で法律職の資格試験勉強をし、23歳で海事代理士として、広島の呉市で開業します。海事代理士は、司法書士、行政書士や社会保険労務士の海事版で「海の司法書士」、「海の社労士」、「海の行政書士」とも言われます。海運・物流・貿易の重要拠点としての港を擁する広島ですが、昔からの港湾関係者の中に、新人の海事代理士が食い込んでいくことは、簡単ではありません。開業1年目、2年目の年間売り上げは数十万円だったそうです。

しかし、司法書士でも、船舶抵当権の登記等を行えますが、海事関連の法務が得意な司法書士や弁護士が少ない状況から、自ら海事関係法令の解説冊子を作って銀行などの金融機関にアプローチをしたそうです。
そしていつしか、海難事故審判について弁護士から法律相談を受けたり、船舶会社の破産管財人弁護士と共同で業務処理をしたり、と海事法務の分野を専門に扱い、県外からも依頼や問合せが来るようになります。
こうして田島先生は、既存の海事代理士が手がけていない新しいジャンルを開拓して、業務を増していったのです。

その間にも、27歳で行政書士資格や宅建の資格を取得したり、ペット用アイデア器具を考案して実用新案を自ら申請し、ペット関連企業300件にDMを送り契約を得る・・など、マルチに行動力を発揮していきます。
まさに、「誰もやっていないこと」を発見して、そこを開拓すべく行動していったわけです。
4 「垂直、水平」思考
漫画原作者になった経緯も、とてもユニークでした。
当時、田島先生が愛読していた漫画「ナニワ金融道」は、司法書士のリアルが描かれていて、海事代理士も出してほしいと考えファンレターのつもりでストーリーの筋書きと実務資料を漫画用に改編した資料を編集部に送ったそうです。すると、なんと作者の青木雄二先生から直に電話があり、結果、「ナニワ金融道」の最後の3巻の海事編の海事法のストーリー部分を原作者的立場で関わることになったそうです。
そもそも弁護士以外の法律家が出ている漫画はナニワ金融道以外には存在しなかったので、司法書士以外にも、海事代理士もあるぞ、とアプローチしたのです。

その後、行政書士の体験を基に「カバチタレ!」の構想をまとめて脚本にし、メジャー青年誌3誌に持ち込むと、全部で使いたいと言われ、最終的にモーニングでの連載が決まったといいます。
漫画「カバチタレ!」シリーズは、コミックス全93巻、累計で約1000万部超の大ヒット。22年以上の連載で、テレビの連続ドラマにもなったので、「行政書士」が一気にメジャーになり、一時は35,000人程度だった行政書士試験受験者が70,000人にまで増加するといった現象も起きました。

講演の中で、田島先生が「垂直思考、水平思考」の例を話されていました。
私が感じた目前の例は、海事代理士、行政書士と、それぞれの士業で依頼人に応えていくことが垂直思考とすれば、法知識と様々な職業を通じて得た人生経験を糧に、その全てを咀嚼して漫画原作に載せ、社会全体に発信することができる水平思考を持っているのが田島先生だ、ということでした。
最後に
講演後の懇親会までお付き合いいただき、テレビ業界のお話や原作者のご苦労など、いろいろとお聞きして、楽しい時間でした。
現在、広島大学大学院医系研究科で医学博士号の取得を目指して法医学を専攻する大学院生でありながら、定時制高校に在籍して高校生もされています。きっと、この希有な経験は今後の作家としての新たなる分野や次なる構想で、アウトプットされるものと期待しております!

=プロフィール=
プラン行政書士事務所  代表行政書士  中西浩子
日本で暮らしたい、農業をはじめたい
さまざまな思いを全力でサポートします。

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